
先日、20数年前に建物を建てていただいた御客様の家の近くを通ったので寄ってみた。そこの御客様は、80歳代のご夫婦と犬1匹とで住まわれている家でした。玄関口でご挨拶だけでもと思っていたら、奥様が出て来られ、お茶でもと言われ御邪魔することにした。家の中は以前から綺麗にされていて、建物を建てさせていただいた私も、何だか嬉しくなっていた。奥様からお茶や、お茶受けを出していただき、御馳走になっていると、御主人の姿が見えないのでお聞きしたら、数年前からお体を崩され、今でも入院なされて入るとの事。その後、話も進んで行くうち、今度は犬のいない事に気付いた。犬の事を奥様に聞くと、奥様が「それがね、平木君、聞いてよ」と言われ、奥様の話を聞いておどろいた。ご主人が入院した時、奥様は物凄く怖くて不安になっていて。いつもは、誰が来ても吠えず、隠れていて、食事の時以外は、寝てばかりいたその老犬が、その日から奥様を見守るように番犬の役目を果してくれて、その後、奥様も足腰が悪くなり杖を付き,日常の生活がしんどく思える用になった頃、お孫さんが結婚して、おばあちゃんである奥様と同居する事になった。それを察知したのかどうかは解らないが、お孫さんご夫婦が引越して来られた日、何時もの用に老犬に餌を持って行ったが、見向きもせず、食べようともせず、じっと奥様の顔を見つめていたので、老犬の大好なソーセージなら食べるのではと思い食べさせたら一口だけ食べ、奥様に体を摩すられながら、眠るように静かに天国に行かれたとの事。その老犬は今度同居するお孫さんが、小学校の時拾って来て、奥様にお願いして飼っていたらしく、その話を聞いた私は老犬は、奥様ご夫婦の事が心配で自分の寿命以上に生き、ご夫婦を見守り、御孫さんと同居された事を見届け、自分の役目が終わった事を確認して眠るように天国へ旅立ったと思わずにはいられなかった。
今週の私の好きな詩 * 名もない草も実をつける、いのちいっぱいの花を咲かせて。
* (相田みつを作品集、ヨリ)