私には今年88才になる母親がいる。同居はしているが、時間の違いで食生活は別にしている。母の一日は、朝食を取り早くから庭の草取り、昼は畑の手入れ、夕方は早めに風呂に入り、食事を済ませ、私が家に帰り着く頃には部屋の電気は消え、いつも寝ている。そんな母の笑い話がある。年が明けた1月が私の誕生日で、妻や子供達からも誕生日プレゼントを貰い祝ってもらっている。今年も誕生日の前日、家に帰って冷蔵庫を開けてビールを取り出そうとしたら、誰が買って来たのかケーキの箱が入っている。さては私に内緒にしておいて、当日ビックリさせるつもりだと思い、知らない事にしておいた。誕生日の夜、母はもう寝ていたので、妻と子供達が祝ってくれた。それぞれからプレゼントを貰い、ごちそう食べた。だが誰一人として冷蔵庫に入っているケーキを持って来ようとはしない、シビレを切らした私が、冷蔵庫に入っているケーキ食べないの?と言ったら、皆それぞれの顔を見ながら各人、私買って無いと言い出した。では誰が置いているのか不安になり開ける事にした。テーブルの上にケーキの箱を置き開けて見た。ケーキを見た全員一同笑い出した。立派なケーキにはメッセージが書かれていた「 こういち、誕生日おめでとう 」家族で私に直接メッセージに名前である。こういち、を名指しで言うのはただ一人、母親だ。それを皆察したので笑ったのだ。母は寝るのが早いので、私や家族が帰って来るまで待てず渡しそびれたのだろう。何か恥ずかしくも有り、嬉しくも有る誕生日でした。次の日、家を出る前「ありがとう」とだけは言って出た。
* 今週の私の好きな詩・・・かねが人生のすべてではないが、
有れば便利、無いと不便です、
便利なほうがいいな。
* (相田みつを作品集、ヨリ)